「松田のマヨネーズ」
開発秘話
2021年上半期の取扱個数ランキング第3位の「松田のマヨネーズ」。保存性、生産効率、原価など様々なコスト要因から添加物の影響が大きい調味料や加工食品の中で、自然の味を愛する消費者の中でもファンが多い定番商品です。製造は株式会社ななくさの郷、「松田のマヨネーズ」の「松田」は松田優正社長の名字に由来します。大手メーカーの製品は大抵、原材料に『調味料(アミノ酸等)』という表示がある中で、「松田のマヨネーズ」は自然素材を使ったマヨネーズの代表的な存在です。
【2021年上半期の取扱個数ランキング】
(ギフト・お取り寄せ品を除く)
松田氏は元々、自然食品店を営んでいらっしゃいました。マヨネーズ作りをはじめたのは、養鶏家から仕入れて余ってしまった卵がもったいないと感じたことがきっかけだそうです。それまで食品加工の仕事をした経験はなかったそうですが、素材については豊富な知識をお持ちだった。そして、いい材料を使えば自然とおいしい食べ物になる、と考えていらっしゃった。「世の中ではどうしても経済効率が優先されるから、食べ物は工業的に扱われがちだ。食べ物は工業製品ではなく命である。」という松田氏の言葉には強い思いを感じます。マヨネーズの卵は卵黄だけを使ったタイプ、全卵を使うタイプと各社違いがあります。「松田のマヨネーズ」は全卵を使っていますが、それは黄身と白身で一つの命である卵すべてを使いたいという想いがあるからです。また、今では材料を混ぜるのに機械を使用していらっしゃるものの、材料を少しずつ混ぜ合わせていく大量生産に向かない乳化方法を採用しています。その理由は、泡立て器とボウルを使った手作りと同じ作法で生産したいというこだわりがあるからです。
材料の素性もすべてパッケージに印刷されています。油は生活クラブ生協と協力して圧搾法のサラダ油を開発した米澤製油の圧搾絞りなたね油。製造工程においてヘキサン、リン酸、シリコーンなどを使用しない、こだわりの製法です。卵は平飼いで鶏を飼育している、信頼できる養鶏家から仕入れた有精卵。そして卵の状態を一つ一つ確認するために手で割ることにこだわっている。卵は養鶏家の考え方、餌や時期、場所によってそれぞれ卵黄の色が違うため、バランスよく混ぜることで色を調整するためでもある。酢はオーガニックりんごの果汁100%で作った酒を発酵させた純りんご酢、発酵過程でアルコールを添加するようなことはされていません。食塩は海水を平釜で炊き上げた伝統海塩の『海の精』、それと100%からし菜の種を粉末にしたマスタード、国産ニンニク、香辛料抽出物ではないオーガニックのホワイトペッパー。さらに酸味と甘味のバランスをとるための100%蜂が集めたハチミツを使用。白砂糖は使いたくないこだわりから自然な甘味を求めてハチミツを使用したのだが、これが後に問題を招く火種となります。
ちなみにこの商品、パッケージ袋に『おかげさまで“マヨネーズ”です』のメッセージが印刷されているのが目を引きます。マヨネーズであることに何の疑いも感じませんが、一体なにが「おかげさま」なのでしょうか。
それは2003年のこと。それまで18年間なんの問題もなく販売されてきた「松田のマヨネーズ」が、農水省の審議会でJAS規格に入っていない「ハチミツ」が使用されていることを指摘されました。その結果「マヨネーズ」と名乗れなくなり、仕方なく「マヨネーズタイプ」のドレッシングと名乗って販売することになりました。本来は粗悪な品を排除するための規格が、そうでない製品に問題をもたらした不運でした。しかし、「安価なブドウ糖液糖などはよくて、自然のハチミツが認められないのはおかしい」と愛用者も異議の声をあげ、署名運動まで起きました。また、話題になったことで商品を知り買ってくれた人もいて、そういった方がリピーターになってくれることで応援の輪が広がったことも幸いに働いたそうです。それでも規格の見直しは5年に一度の審議会を待たなければならかったのです。5年後、念願かなってJAS規格でハチミツが認められ、元通り「マヨネーズ」と名乗れるようになった時は、現代から思えばあまりにも当たり前のことではあるものの、当事者のみなさんが興奮や感謝で満たされたであろう光景が目に浮かびます。そういった経緯が「おかげさまで“マヨネーズ”です」という言葉の背景にあります。
ちなみに甘口と辛口はマスタードの量が違うだけだそうです。甘口は辛くないというだけで特別甘いわけではありません。辛口も辛いわけではありません。ユニマルシェでは辛口の方が人気があります。